面白いCDを思いついたものだ。フランスの子供たちが幼い頃に覚える童謡やフォルクロリックな歌を、それぞれの曲名の後にあるカッコ内に示したようなアレンジで歌っているのだ。
グループ名はティトゥンジク。アレンジ担当スュルヴァン・ヴェリエとトマ・プレ。彼らはそれぞれ、キーボード、ギターを演奏する。さらにパーカッションのシャルル・グレヴランが加わっている。
ヴォーカルはエロディー・ル・バイユ、セリーヌ・ドゥヴゾー・ドゥ・ラヴェルヌという女性二人に、前述のトマ、シャルル。
これ以外に資料がないので彼らのプロフィルは分らない。が、のびやかで楽しい発想の持ち主が集まっていることは、一度聴けば納得できる。
冒頭の「緑のネズミ」は17世紀末から18世紀初頭に作られたもの。1匹の緑のネズミをつかまえて引き出しに入れると「暗すぎる」と言う。帽子に入れたら、「暑すぎる」と言ったという他愛のない内容。それが何と、ダンス・ミュージックになっている。
もう1曲ダンスに生まれ変わっているのは「月の光に」(8)。ファンタスティックな曲調が速いテンポに置き換えられ、意外な効果をあげている。でも、途中に挿入された、子供の声による正調を聴くとホッとするのも事実。
2曲目の「キャベツの植え方をご存知」は歌いながら踊るための曲で、レゲエのアレンジが心地良い。
「ヒバリ」(4)は日本では「タマゴとニワトリ、どっちが先」として知られている、あのメロディー。だけど、どうしてまた“ヒバリ”が“ニワトリ”になったんだろう。よく分らない。この曲はライっぽいアレンジに乗っている。
「小さな男」(6)はスロー・バラードで、とても子供向きとは思えない、ちょっとブルーな感じも漂う。
ツイストのビートで歌われるのは「善良なるダゴベール王」(11)。歌のなかではキュロットを逆様にはいたり、狩に出ては息が切れてしまうという、ちょっと間抜けな王様。
この王様、メロヴイング王朝時代の西暦600年頃に実在したという。歌に出て来る大臣、聖エロワも実在の人物。ナポレオンが失脚した時、王党派の連中がこの歌を歌って皇帝を嘲笑ったと伝えられている。
童謡もまた国の財産だから、こうした楽しい試みを通して歌い継がれていけばいいと思う。
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