いま頃はもうフランスへ向けて飛行機に乗っていることだろう。僕たちに大いなる喜びと熱い感動を残して彼らは去って行った。彼らとはジャンゴ・ラインハルトの精神を受け継ぐ、マヌーシュ・スウィングの旗手たち。
昨日、午後4時30分から九段会館大ホールで「サムソン・シュミット・カルテットwithドラド&チャボロ・シュミット」コンサートが開かれた。
会場内に入ると、キヨシ小林&ジプシー・スウィング・ギャングもカフェ・パフォーマンスを繰り広げ、気分を盛り上げている。立見が出るほどの賑わい。1週間前、彼らとチャヴォロのレコーディングに立ち会った時の熱気を思い出す。
チャヴォロのマネージャーであるベアトリスさんがいたので、他の都市でのコンサートの様子はどうだったか尋ねた。「とても良かった」と顔をほころばせる。そうだろうな、と思う。彼らの音楽には理屈はいらない。その情熱は聴いているだけで伝わるのだから。
25歳のサムソン・シュミット Samson Schmitt はこれからのマヌーシュ・スウィング・シーン注目のギタリスト。ティンボ・メルシュタイン Timbo Mehrstein(ヴァイオリン)、マヨ・ユベール Mayo Hubert(ギター)、ジャン・コルテス(ベース)とともにカルテットを組む。
サムソンの父親でチャヴォロ・シュミット Tchavolo Schmitt の従兄弟に当たるドラド・シュミット Dorado Schmitt は赤いジャケットを着て登場。そのお洒落な気分は、彼が弾くギターやヴァイオリンにも反映されているようだ。
ヴァイオリンが入ることによって、マヌーシュ・スワイングにより細やかな感情表現が加わった。ヴァイオリニスト、ステファン・グラッペリとジャンゴが結成したフランス・ホット・クラブ五重奏団を想い起こさせるメンバー構成だ。
シャンソン・フランセーズに関わる者として嬉しい驚きだったのは、ドラドがヴォーカルを披露したこと。リナ・ケッティ Rin Ketty やジャン・サブロン Jean Sablon のレパートリーとして知られる「待ちましょう」"J'attensdrai" を小粋にスウィングさせた。歌い出したものの、チャヴォロとの呼吸が合わずに何度かやり直していた。が、それもまた面白い。
シャンソン・フランセーズからは「今宵ただひとり」"Je suis seule ce soir" も演奏された。こちらはチャヴォロがリードを取った。彼らとシャンソン・フランセーズの歌手とのコラボレーションがあったら面白いかもしれないなぁ、なんて勝手な想像をしてしまう。
サムソン・カルテットのまとまりもいい。が、チャヴォロが登場した途端にステージそのものがパッと明るくなり、グループ全体がヴィヴィッドな輝きに包まれるから不思議だ。彼のギターの音は大きいだけでなく、煌いているのだ。時に激しく、時に繊細。緩急自在に弾き分ける。爆発する天才、とでも言うしかない自由さ。あの奔放な音の洪水に身をさらしても気分が晴れないという人は、たぶん心が病んでいるのだろう。すぐ医者に行ったほうがいい。
素晴らしいエネルギーを貰って、さあ、今秋世に送り出す本の原稿の残りを書くぞ。
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オーマガトキのTさんが写真をくれたので記念に掲げておこう。キヨシ小林&ジプシー・スウィング・ギャングにチャヴォロが参加したレコーディングの際に通訳した時のもの。