いま、ポエジーのある歌が聴きたい!
大野修平著 『わが心のシャンソン 〜 そして詩人の魂をめぐって』

平凡社刊 定価:1575円[税込]全国の書店で好評発売中。

大野修平が出会った歌手とシャンソンたち。原詞と対訳を掲げてその魅力を探る。
〈収録アーティスト〉シャルル・トレネ/イヴ・モンタン/フランシス・ルマルク/レオ・フェレ/コラ・ヴォケール/セルジュ・ゲンズブール/ジャンヌ・モロー/ジャック・ブレル/ジョルジュ・ブラッサンス/ピエール・バルー/ジュリエット・グレコ/ジョルジュ・ムスタキ/ジルベール・ベコー/エディット・ピアフ/シャルル・アズナヴール そして21世紀のシャンソン歌手たち。


大野修平、最新の書き下ろしが刊行されました。
どうぞ書店でお手に取ってご覧下さい。

『哀愁と歓びのシャンソンの名曲20選〔CD付〕』
(中経出版)¥1,800

シャンソン関連のコラム、シャンソンゆかりの場所を示した
パリのイラスト地図も入ってます。
よろしかったらご感想やご意見をメールなどでお寄せ下さい。

◇ お 知 ら せ ◇
 大野修平が講師を担当する「シャンソン de フランス語」が始まりました。インターネットでフランス語のレッスンができます。ご利用には料金がかかりませんのでお気軽にどうぞ。
動画レッスンURL:http://www.unself.jp/
トップページから「語学」の項目をクリックしてお入り下さい。
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今日もまた…  3月28日(金)晴れ

  

 恐縮ですが、今日もまたお詫びをしなければなりません。

 というのも、明29日(土)、浅草にある台東区民会館8階でシャンソンについてのお話をすることになっていまして、その準備に追われているのです。

 CDをかけてシャンソンの楽曲をお聴きいただくのですが、それだけでは分りづらいといけないので映像も使おうと思います。

 楽曲の並べ方や、シャンソンにまつわるエピソードの下調べなどに予想を超える時間がかかっています。苦し紛れの言い訳にしか聞こえないとは思いますが、何とか楽しい講座にするためにもう少し時間が必要です。

 そういうわけですので、「ひとりごと」をお休みさせていただきます。事情ご賢察の上、ご了承願います。

明日3月29日(土)、一日だけの「大野修平のシャンソン講座」が開催されます。
 シャンソン歌手・庄司淳さんは、三越カルチャーサロンでシャンソン講座を受け持っておられます。
 庄司教室の受講生の方々のご配慮で、一日だけの僕のシャンソン講座が開催される運びとなりました。この機会に、まだ見ぬシャンソン好きのみなさんにお目にかかれたらと思います。定員は70名ですが、まだ少し余裕があるようです。

[日 時] 3月29日(土)13時30分開場 14時00分開演
[会 場] 台東区民会館8階 第五会議室
     台東区花川戸2−6−5 tel:03-3843-5391
[最寄駅] 東武線・地下鉄銀座線浅草駅 都バス(都08)日暮里⇔錦糸町、(草)64浅草雷門⇔ 池袋東口 二天門下車
[会 費] 無料
[主 催] 三越カルチャーサロン+庄司淳シャンソン教室
[協 賛] 庄司淳先生を応援する会
[問合せ] 各グループ代表&庄司先生

   


   

夢の始まり  3月24日(月)雨

  

 雨のために延期した父の墓参りに22日(土)に行ってきた。
 湯河原駅を出ると、気づいたことが二つあった。
 まずは23日(日)に行なわれる町議会選挙候補者たちの最後の訴え。もうひとつは、道路のあちこちに立てられた「武者行列」の幟。

 幟に書かれた文字を見る。「源頼朝旗挙げ武者行列」とある。4月の第一日曜日に開催されるレキシイヴェントのお知らせだ。

 平安時代の末に当たる治承4年(1180年)、平家打倒を意図して源頼朝が兵を挙げる。小田原の南にある石橋山で8月23日、平家方の大庭景親と合戦になる。が、多勢に無勢で頼朝軍は敗退。その時、湯河原あたりを領地としていた土肥次郎実平が敗軍の将頼朝をかくまった。
 その歴史のひとコマを再現するのが、この武者行列というわけ。僕はまだ見ていない。

 亡父の墓のある城願寺は土井実平の持仏堂だった。いまも木立に囲まれた一角に土肥一族の墓所がある。墓参に同行した息子を案内して、その由来を語って聞かせた。

 明けて23日(日)。この日をずっと楽しみにしていた。
 銀座産経学園での講座「フランス語で歌いましょう」の受講生に、宇田川博伸さんという男性がいらっしゃる。
 宇田川さんは富里に土地をお持ちで、みかんや梅、ローズマリーなどを植えているが、ブドウを栽培したいという考えをお持ちだった。ある時、宇田川さんは「一緒にやりませんか」と打診された。「いずれそのブドウでワインを作りましょうよ」。

 さっそく宇田川さんは、山梨県にある業者にブドウの苗木を手配。それを昨日、畑まで送って貰うことになった。その苗木をひと晩水に漬け、翌日に植えるという計画だった。
 その日がついにやって来たのだ。久々に胸躍る。

 新浦安駅前に朝9時集合。遅れるわけにはいかない。そこで、墓参りの報告を兼ねて立ち寄った、市ヶ谷薬王寺町の母の家に泊めて貰うことにした。
 地下鉄有楽町線の終点・新木場で京葉線に乗り換えて新浦安まで行くためには、途中駅の市ヶ谷から乗り込めば時間を短縮できようというもの。

 新浦安駅から宇田川さんの運転する自動車で富里へ。畑に着くと、もう政樹園緑化から出向いてきてくれた職人、Kさんが待っていた。

 まんべんなく日当りのいい土地で、どこに苗木を植えたらいいか悩むほど。しばし考えた末に場所が決まる。

 Kさんはメジャーを地面に長く引き出して、言った。「180センチずつ計って土に印をつけてください」。180センチといえば二間(にけん)。これから植える計20本を10本ずつ二列に分けて、言われたとおりに印をつけていった。

 一列目を終えると、Kさんのアドヴァイスがあった。「次の列は千鳥に」。一列目と平行ではなく、互い違いになるようにということ。枝が伸び、実がなった時に作業しやすいようにとの配慮だ。
 先の状態に思いを致しながら、いまやるべき作業を整えておく。さすがプロフェッショナル、とつくづく感じた。こういう教えを受けると嬉しくなる。

 次に穴を掘る。Kさんの見よう見まねで掘ってみた。「もっと深く」。Kさんの指示はてきぱきしている。続いて、苗木を結びつけておく支柱を打ち込む。穴のなかにではなく、外側に立てるのがミソ。風に煽られたりした時に共倒れにならないようにするためだ。素人にはそこまで気がつかない。
 ここまでで、当面の作業はひととおり。苗木の到着を待つことにした。

 宇田川さんと僕とで買った苗木の品種はピノ・ノワール。
 ブルゴーニュワインはこのブドウから造られる。遺伝子から見ると、世界中のブドウの原種はピノ・ノワールに行き着く、と聞いたことがある。
 僕たちが仕入れた20本の苗木は、この地に根づいてくれるんだろうか。楽しみな気持ちと心配とが交錯する。

 苗木は午前10時から正午までの間に、宅配便で配達されることになっていた。
 ところが、一向にトラックがやって来ない。
 宇田川さんが電話をかけて事情を尋ねる。どうやら運転手さんが道に迷ったらしい。というのも、隣にある乗馬クラブは地図に載っているけれど、この畑は見当たらないのが原因だった。

 正午過ぎ、待ち焦がれた苗木が届いた。
 さっそくKさんが箱を開ける。取り出した苗木を見ると、根元から下半分ほどまで水を吸っている。
 「これならひと晩水に漬ける必要はないでしょう」とKさん。「24日(月)は一日中雨降りという予報も出ているから、植える作業までやってしまいたい」とも。

 プロの言うことだから、僕たちに異存のあろうはずがない。苗木を手に先ほど掘った穴へ。

 深く地中に差し込んでいたら、またKさんの声。「もっと浅く」。そういうものなんだと初めて知った。
 植えてからホースで水をかける。見ると、Kさんは苗木を引っ張っている。要らない空気をこうして抜いてやるのだという。これも初めて教えて貰った。

 水が十分に土に浸み込んだのを見て、Kさんは手際よく苗木を支柱に紐で結えつけていった。この結び方もいろいろあるという。「時々忘れちゃってね」などと、軽い冗談を飛ばす。まさか、手練れの職人がそんなことはないだろうけれども。

 根元のまわりにぐるっと土を盛り上げる。苗木の植わっているあたりが深皿状になる。そこに水を満たす。これにも意味がある。このやり方を水鉢と呼ぶそうだ。
 Kさんは何気なく、ごく当たり前のこととしてこうした動作をする。素人の僕はそのひとつひとつに興味があるので、「それ、何ですか」と尋ねてしまう。Kさんは面倒がらずに教えてくれる。それがまた嬉しい。

 ともあれ、20本の苗木は富里の地に植えられた。
 実をつけるのは2年後と聞いている。ワインが作れるまでになるには、さらに1年待たなければならない。
 それでも、収穫したブドウから作ったワインで乾杯する僕たちの姿ばかりを繰り返し思い浮かべている。
 夢の始まりだ。

1.丈夫に育ってくれよ、ピノ・ノワール

2.“水鉢”に水を張って

   


   

昼と夜が等しい日を過ぎて  3月21日(金)曇り

   

 昨日は春分の日。普段の年なら21日なのだけれど、今年は閏年だから20日となった。昼と夜の長さが等しい日だと子供の頃に教わった。実際に計ったことはないけれども…。

 父の墓参に行く、と前回の本欄で力を入れて書いた。しかし、あの雨と寒さのなかへ出て行って風邪でもひいてはたまらない。一緒に行くはずだった娘が胃腸炎を患ってしまったこともあり、22日(土)に延期することにした。

 フランス語で「春分の日」は、"equinoxe"(エキノクス)という男性名詞。元をたどればラテン語に行き着く。語の前半が"aecuus"(アエクウス:等しい)、後半が"nox"(ノクス:夜)とから成る。昔の人たちは正確な天文学の知識を持っていたのだ。

 「地球の上に朝が来る/その裏側は夜だろう」と、あきれたぼういずが歌っていたっけ。そりゃそうだ、と言ってしまってはいけない。ただ、笑えばいい。真理は意外にシンプルなものなのだ。
 春分の日にはその地球のどちらの側にいても、昼と夜の長さが同じなんだから不思議だし、面白い。

 墓参りに行かなかった代わりと言ってはナンだけれど、こんなサイトがあるのをご紹介したい。

 その名も"JE SUIS MORT.COM"(ジュ・スゥイ・モール・ポワンコム)。
 訳せば「私、死にましたドットコム」とか「私、死んでますドットコム」といった意味。
 個人的には、ザ・フォーク・クルセダースが歌った「帰って来たヨッパライ」のなかで繰り返される歌詞「おらは死んじまっただ」がピッタリくるなぁ。「おらは死んじまっただドットコム」。

 どんなサイトだろう? サブタイトルを見てみよう。"LE CIMETERE DES CEREBRITES Biographie et celebrite disparue" とある。「著名人たちの墓地 物故著名人バイオグラフィー」というわけ。

 たとえば今日、3月21日のトップページには、アイルトン・セナの写真が墓石に貼ってある。さらに「1960―1994」と生没年が刻まれている。
 その右に彼のバイオグラフィー。墓碑銘代わりといった趣だろうか。詳細を読みたければ、文末の"lire la suite"(続きを読む)という文字列をクリックすればいい。
 このトップページ、毎日変わるところが芸が細かい。

 もちろん、シャンソン・フランセーズ関係の著名人の墓石つきバイオグラフィーも用意されている。ちなみに、2月13日に亡くなったアンリ・サルヴァドールもすでに“殿堂入り”した。

アンリ・サルヴァドールも鬼籍の人となって、ここに。

 トップページ上部に"CHERCHER TOMBE"(墓を探す)とある。ここをクリックして、お目当ての著名人を検索できる。

 その隣にあるのが、"TOP 50"(トップ サンカント)。
 "TOP 50"といえば、元来はショップでの実際のCDの売上を元に作成されるヒットパレードのことだ。
 それをこの"JE SUIS MORT.COM" では、よく検索される著名人の墓石の順位を50位まで掲げ、"TOP 50" と称しているのだ。

 それによると、堂々トップはポップ・フランセーズシンガーのグレゴリー・ルマルシャル Gregory LEMARCHAL。続く第2位もシンガー、クロード・フランソワ Claude FRANCOIS。

 歌手はやはり人気があるようで、第4位にはダリダ Dalida、第7位マイク・ブラント Mike BRANT、第18位サッシャ・ディステル Sacha DISTEL、第24位セルジュ・ゲンズブール Serge GAINSBOURGと続く。

 エディット・ピアフ Edith PIAF は第31位。すぐ後をジャック・ブレル Jacques BREL が追う。ルイス・マリアーノ Luis MARIANO は第34位で、アンリ・サルヴァドール Henri SALVADOR は第38位。1981年没のジョルジュ・ブラッサンス Georges BRASSENS を1ポイント上回る。亡くなったばかりなのに健闘(?)している。

 他に歌手としては、ボリズ・ヴィアン Boris VIAN(第43位)、ジョー・ダッサン Joe DASSIN(第44位)、ピエール・バシュレ(第46位)、カルロス CARLOS(第50位)となっている。

 変わったところでは、ナザレのイエス JESUS DE NAZARETH が第12位にエントリー。え、この人誰かって? イエス・キリストです。
 イエスのすぐ下にノミネートされているのが、何と革命家のチェ・ゲバラ CHE GUEVARA。

 この"JE SUIS MORT.COM" では、墓地で故人を偲ぶというスタイルで、著名人の過去の業績を一覧できることがご理解いただけたと思う。

 そうした舞台装置を使わず、シンプルに生年月日から引く著名人辞典もある。
 choronobio.com (クロノビオ・ポワンコム http://www.chronobio.com/)。トップページの色合いもブルーで明るい。先ほどの"JE SUIS MORT.COM" が夜のイメージとするなら、こちらはまさに昼のイメージと言えるだろう。

 同サイトのトップページに人名リストがある。アトランダムに今日生まれの著名人を拾ってみよう。カッコ内は生年。

 作曲家ヨハン・デバスティアン・バッハ Johann Sebastien Bach(1685)、ナポレオン1世の弟リュシアン・ボナパルト Lucien Bonaparte(1775)、画家アンリ・マティス(1886)、サッカー選手ロナウジーニョ Ronaldhino (1980)、恋人のダリダとサンレモ音楽祭で同じ曲を歌って敗れ、自殺した歌手ルイジ・テンコ Luigi Tenco(1938)…。
 1998年から2002年まで、サッカー日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ Philippe Troussier(1955)も、3月21日生まれだそうだ。

 このchoronobio.comで検索できるのは、他界した著名人ばかりではないことを念のために言い添えておこう。

 生と死。それを昼と夜にたとえてみようか。どちらの側からも人間の一生を見つめることができることを、"choronobio.com" と"JE SUIS MORT.COM" は示唆しているように感じる。
 昼と夜の長さが等しい日を過ぎて、そんなことを考えてみた。

   


   

彼岸に想う  3月19日(水)曇り

   

 「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる。
 昔の人の知恵は確かなものだ、とこの年になって思い知らされることが多いけれど、この言葉もそのひとつ。
 彼岸に入った今日この頃、確かに春の足音を耳にしているような気がする。

 春分・秋分の日を挟んで前後七日間が「彼岸」。僕は仏教徒ではないが、この期間に亡父の墓参りに行くのが習いとなっている。
 今年、父の十七回忌を迎える。その法要は秋に営む予定だ。幸い母は元気なので、このイヴェント(?)では大事な役割を果たして貰わねばならない。

 86歳ながら元気とはいえ、母は足が少し弱っている。彼岸だからといって、無理して起伏ある墓地内を歩いて転んだりしたら大変だ。
 そこで、僕が母の代理も兼ねて墓参に行くというわけだ。

 父の墓があるのは湯河原駅にほど近いの城願寺。緩やかな山の中腹で、眼下に手に取るように見える東海道本線の線路の向こうには相模湾が広がっている。
 ジョルジュ・ブラッサンスと同郷の詩人、ポール・ヴァレリーが書いた「海辺の墓地」という詩がある。この二人が眠る南フランスのセートにある墓地にはまだ行ったことがないけれども、これと似た風景なんじゃないかとずっと勝手に想像してきた。

 大流行りした「千の風になって」では、墓のなかには死んだ「私」の魂はいない、というようなことが歌われている。
 そうかもしれない。肉体という牢獄から解き放たれた魂は、この宇宙を自由に飛びまわっていると考えることもできよう。
 それを是とすれば、墓前に額づくことにさほどの意味はないと言うことにもなろうか。

 おいおい、墓石を扱っている石材店の売上を落とす気か、なんぞという半畳を入れるつもりはない。
 だけどそんなもんだろうか、という何となく腑に落ちない気分があの歌を聴くと残る。

 確かに、墓に行かなくても亡くなった人を想うことはできる。家だろうと、街なかを歩いている時だろうとそれは可能だ。
 しかし、僕は故人の墓に向かい、静かにその人の生涯や境遇に想いを馳せるのが好きだ。そして手を合わせ、あの世での幸せを祈る。そうした行為を無意味だとは決して考えない。
 この世での活動をすべて終えた故人の終着点である墓の前でその人を思慕する。いまはない人への敬意の表わし方としてふさわしいやり方だと考える。

 というわけで、彼岸の中日である明日、父の墓参りに行く。雨という予報が出ているけれど構わない。
 父とは生前、なぜかあまり膝をつき合わせて話し込んだことはなかった。詫びなければならないことは山ほどある。
 そんな僕でも墓に会いに行けば、父が喜んでくれるような気がする。それを信じて湯河原まで行く。

   


   

感動の再会  3月17日(月)晴れ

   

 人は12歳までに食べた物を生涯食べ続けるんだそうだ。
 マクドナルドの戦略の基本はこれだと聞いたことがある。僕たちは子供の頃、TVアニメーションの『ポパイ』で、初めてハンバーガーなる食べ物があるのを知った。ウィンピーという登場人物がしょっちゅう食べるシーンがあった。もちろん画面は白黒だったから、全体がどんな色なのか分らなかった。

 というわけで、僕は12歳までにハンバーガーを食べていない世代に属している。だから、年に一度もマクドナルドに行かなくても何の痛痒も感じない。
 その代わり、昔ながらの菓子類にはノスタルジーを覚える。甘納豆や衛生ボーロ、煎餅、サイコロキャラメル、茶通に石衣、ニッキ飴にサクマ式ドロップス…。その時分、スナック菓子はまだいまのように市中に溢れてはいなかった。

 そう数え上げながら、ひとつの名前が記憶の底から浮かび上がってきた。
 シベリア!
 カステラで羊羹のあんを挟んだ、三角形の菓子。昔はどこのパン屋さんにもあったものだ。
 そういえば、もう何年もお目にかかっていないなぁ。都電や小さな河川の暗渠化などと歩調を合わせて、そっと昭和の風景から消えて行ったんだろうか。

 見かけないとなると、妙に顔を見たくなる。
 インターネットで調べてみることにした。こういう時に頼りになるのがネットだ。
 あった。「シベリアデータベース」(http://www.ne.jp/asahi/66format/aho-room/siberiadb_info.html)。

 それによると、明治時代後半あたりから売られていたらしい。命名の由来もいくつか紹介されている。おお、シベリアについての本まで刊行されているじゃないか。へぇ〜、長方形なんてのもあるんだ。「棹」と呼ぶという。
 さらに嬉しいことに、いまでもシベリアを売っている店の案内まで出ている。親切だ。涙が出そうになる。

 見覚えのある屋号が目に入った。
 アムール・ヱーパン。
 番地は千代田区神田錦町。三省堂書店のある駿河台下からさほど遠くない。古本屋めぐりの行き帰りに、何度もその前を通り過ぎたことがある。黄色いテントが目についたっけ。

 ちょうど先週の金曜日、そちら方面に行く用事があったので行ってみることにした。念のため、朝に電話を入れた。快く取り置きをしてくれることになった。これでひと安心。
 記憶と現実がぴたりと一致した。ピンクっぽい色のビルの1階。見間違えようのない黄色いテント。いかにも昔ながらのパン屋さんといった風情の店構えだ。

 時間がないのか、ひとりのサラリーマンが立ったままパンをパクついていた。
 昼時のピークを外したつもりだったけれど、次から次へとお客さんがやって来る。
 さっそく注文の品を取り出して貰う。三角形のカステラにあんが挟まっている。おお、まさしくシベリア。感動の再会だった。よくぞご無事で、と声をかけたくなった。でも、まわりに人がいたのでやめておいた。

 ケースにはこれまた懐かしい調理パンの数々が並んでいる。ちょうど腹も減っているところだったから、コロッケパン、焼きそばパン、野菜サラダ入りパンを購入。
 ついでに、帽子をかぶったご主人と思しき男性に尋ねてみた。「アムールって、愛とか恋っていうフランス語ですよね」。
 ご主人、笑顔で答えてくれた。

 「うちは昭和初期からやってましてね。私のお祖父ちゃんが『いいパン』という意味でヱーパンと名づけたんです」。
 そう言うと、紙袋に僕の買ったパンを入れてくれながら例の黄色いテントを指差した。「うちの“ヱ”は、上の横棒の右端にカドがついてるんですよ」。言われてみればなるほど、アイウエオの“エ”ではなく、ワヰウヱヲの“ヱ”。
 「それから、みなさんに愛されるようにっていう願いをこめて『アムール・ヱーパン』と、アムールの文字を私の親父が付け加えたんです」。

懐かしのシベリア。大阪から「送ってほしい」と注文する客もいるという。
アムール・ヱーパンの紙袋の上に置いてみた。

 そうだったのか、そうしたいきさつをついぞ知らなかった。シベリアにも店名にも歴史あり、なんだなぁ。
 ご主人に礼を述べ、店を後にする。心はノスタルジックな気分に染まっていた。
 ちょうど雨もあがったことだ。いったん竹橋へ出て国立近代美術館前を過ぎ、北の丸公園で昼食にしよう。同美術館工芸館のレンガ造りの建物も、レトロ気分をさらに高めてくれるだろう。

 ちょいと冷たいそよ風に吹かれながら、懐かしいパンは次々と胃のなかへ。うまい。ひと口でアムール・ヱーパンのファンになっていた。
 シベリアはデザートとしてゆっくり味わった。ああ、そう、こんな味だったなぁ。幼い頃の想い出が、甘い味とともに心にまで広がってゆく。

 普段はあまり甘い物には心惹かれない僕だけれど、このシベリアだけは話が別だ。なぜなんだろう。答が見つからないまま、空になった紙袋だけが手元に残っていた。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とせるマリオン・コティヤール

ムービーアイ エンタテインメント(株) 映画配給部
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目1-2 ダヴィンチ銀座ビル4F 
TEL:03-5537-0151 FAX:03-5537-0853
http://www.movie-eye.com
http://www.piaf.jp

(C)2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION
OKKO PRODUCTION s.r.o.- SONGBIRD PICTURES LIMITED

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『シャルル・アズナヴール/ベスト・ソングス&ライヴ』
      (東芝EMI TOCP-70188/89 2枚組)

CD1:ベスト・オブ・スタジオ
〈曲目〉1.コメディアン 2.希望に満ちて 3.想い出をみつめて 4.遠い想い出 5.昔気質の恋 6.フォー・ミー、フォルミダブル 7.ラ・マンマ 8.悲しみのヴェニス 9.ラ・ボエーム 10.これからは 11.人々の言うように 12.誰 13.想い出の瞳 14.時 15.私は旅する 16.生ける屍〜『言論犯罪』〜 17.きみが僕を愛する時 18.ユー・メイク・ミー・ソー・ヤング(フランク・シナトラとのデュエット曲) 19.少年がいた 20.世界の果てに

CD2: ベスト・オブ・ライヴ・オランピア
〈曲目〉1.それがわかれば 2.八月のパリ 3.すべては終わり 4.青春という宝〜帰り来ぬ青春 5.僕は戻ってくる 6.愚かな恋 7.燃えつきて 8.僕の肩でお泣き 9.ジャム・セッションのために 10.愛のあとで 11.生命をかけて 12.青春の思い出 13.二つのギター 14.戦いの前に 15.生きる喜び 16.声のない恋 17.きみの思い出 18.灯りを消して 19.のらくらもの 20.アヴェ・マリア

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お  知  ら  せ

詳細は10月25日付本欄をご参照願います。

イングリッド・ベタンクールかけポスター

 国際イングリッド・ベタンクール連盟委員会が全世界的に幅広い支援を呼びかけています。詳細はサイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/をご覧下さい。日本語でも読むことができます。

 サイトhttp://www.ingridbetancourt-idf.com/otages/にも注目して下さい。画面右にある"Telechargement"(テレシャルジュマン=ダウンロード)から、イングリッドのポスターをダウンロードできるようになっています。この「お知らせ」欄に掲げた写真と同じものです。

 同じページを下方へスクロールしていくと、左側に写真が縦に並べられています。いろいろなドキュメントを見ることができます。
 上から5番目に"Allumez une bougie"「ローソクを灯して」という項目があります。写真をクリックすると、多くのローソクが並ぶ画面になります。一番下にあるローソクの絵をクリックしてみましょう。その絵が動いてすでに光を放っている列に向かって進んで行きます。
 これで、ヴァーチャルなローソクを1本灯したことになるのです。

イングリッド・ベタンクール解放を訴えるシャンソンたち

 囚われの身となっているイングリッドやその他の人々の解放を歌うことを通して呼びかけているアーティストたちがいます。

 ☆ルノー Renaud 《Dans la jungle》「ジャングルのなかで」(EMI 09463 494690 2)
サイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/ からインストゥルメンタル・ヴァージョンをダウンロードできます。

 ☆セシレム Cecilem ピアノを弾きながら歌う女性歌手セシレムが"Chanson pour Ingrid" を歌っています。Emexのサイトからmp3形式でダウンロードできます。

http://emex-music.com/cecilem/

http://www.emex-music.com

歌を聴きながら、イングリッドと人質の方々を支援しましょう。


♪Petites annonces♪

☆『ディア・ピアフ ベスト・オブ・エディット・ピアフ』
(東芝EMI TOCP-67296)

ピアフを敬愛するアーティストたちがセレクトした11曲を含む珠玉のベスト・アルバム。
「恋人が一輪の花をくれた」石井好子 撰/「バラ色の人生」椎名林檎 撰/「パリの空の下」小野リサ 撰/「いつかの二人」クレモンティーヌ 撰/「水に流して」中島みゆき 撰 他全20曲、【解説】大野修平。


♪Petites annonces♪
おすすめシャンソン・フランセーズCD&DVD
(対訳または解説:大野修平)
   
EMIミュージック・ジャパンファミリークラブ
BMGファンハウス
『シャンソン名曲大全集』
Le florilege de la Chanson Francaise
(10381 CD10枚組)
『魅惑のシャンソン名曲集
 〜Vive la Chanson!〜』
TheCDClub
(EMI ODEON FFCP-41710〜1 CD2枚組)
パトリック・ブリュエル
『アントゥル=ドゥ』
(BVCM 34015〜16 CD2枚組)
☆このCDについての詳細は当サイト「ディスクガイド」をご参照下さい。
ユニバーサル・ミュージック・ジャパン
オーマガトキ

ジャック・ブレル
『ベスト・オブ・ジャック・ブレル Brel Infiniment Jacques Brel』
(UICY-9450)

アンリ・サルヴァドール
『ベスト・オブ・アンリ・サルヴァドール』
Henri Salvador Henri Salvador
(CD2枚組 UICY-1258/9)

『アコーデオン』
(DVD OMBX-1004)
[監督]ピエール・バルー
[出演]リシャール・ガリアーノ/タラフ・ドゥ・ハイドゥークス/クロポルト/ダニエル・ミル/モーリス・ヴァンデール/シブーカ/クロード・ヌガロ/coba/続木力/深川和美/まや他